読書

【感想】佐藤 正午『月の満ち欠け』はたして純愛と呼べるのか?

Red Veletのイェリさんが『月の満ち欠け』を読んだと知り、

  • 韓国語にも翻訳された本
  • 韓国アイドルが読んだ本
  • 第157回直木賞受賞

と、気になる要素があったので読んでみることにしました。

この記事では『月の満ち欠け』についての感想を書いていきます。

ネタバレになる話があるかもしれませんので、未読の人は注意して頂ければと思います。

追記

「岩波文庫的」な装丁で、岩波書店から『月の満ち欠け』が発売されているらしい。

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岩波文庫は長い年月の評価に耐えた古典を収録しており、日本の小説も夏目漱石ら文豪の作品が中心。そのため、刊行後まだ2年半の同作を、岩波文庫ではない文庫本『岩波文庫的 月の満ち欠け』として刊行することを決めた。

「岩波文庫的」な直木賞小説 岩波が異例のパロディー装丁 – 産経ニュース

 装丁は一見すると岩波文庫のようだが、通常は「緑」(現代日本文学)のカバーの背の色が月の光を意識した「ゴールド」だったり、表紙の左下のマークが「月の満ち欠け」をイメージして微妙に変わっているなど、ちょっとしたいたずら心が添えられている。

「岩波文庫的」な直木賞小説 岩波が異例のパロディー装丁 – 産経ニュース

装丁にこだわってる「岩波文庫的」な『月の満ち欠け』ちょっと欲しい…。

『月の満ち欠け』の内容

あらすじ

あたしは、月のように死んで、生まれ変わる──目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。

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『月の満ち欠け』の感想

それを執着と呼ばずに愛と呼ぶな

え、しんど?結局なんの話??

いや、分かるよ。生まれ変わってるんだよね???

RADWIMPS「前前前世」が頭の片隅にチラつきつつ読み進めていた。

「怖い」という感想しか出てこなかった。

そもそも、この小説で描かれているのは、愛と呼べるのか?

愛するって何。死ぬって何。

『6月31日の同窓会』を読んだときも「しんど~~~」って思ったんですけど、それは頭を使って疲れたって感じで。

『月の満ち欠け』は、ずーんっとしんどくなった、心が。

純愛というより、ここまで来るとホラーでは?

純愛ストーリーとして紹介されてることが多いけど、「結局怖いのはいつだって人間!」タイプのホラーということで推していく。

月のように生まれ変わるということ

月が欠けては満ちるように、その命が尽きても愛する人に再び出会うために、生まれ変わりたいものなのか?

『月の満ち欠け』に出てくる「生まれ変わること」って、永久的に続く呪いなんじゃないかなって思った。

絶望的な生まれ変わりは呪い

輪廻転生系の話は嫌いでないのに、この話を怖く思った理由を知りたくなった。

同居人にストーリーを話してみたら「それって、純愛っていうよりは呪いって感じがする」と言ってた。

信じることって呪うことと近い気がする。

人は、自分が信じた結果にならなくても(望み通りにいかなくても)、受け入れていくんだと思うんですが、「るり」は受け入れなかった。

自分の人生を拒絶して生まれ変わった先で、信じた通りになることを願った。

「生まれ変わり」とか「純愛」に苦手意識があるわけではないのに、このお話を読んで綺麗な純愛話だとは思えなかったのは、生まれ変わるときの思いが引っかかるからなのかな。

そして、月の満ち欠けは続いていく

『月の満ち欠け』は、読了後にいろいろ考えたくなる話だったので、感想記事を調べてみた。

そこで、面白いなぁと思う意見を見つけて、この小説の落としどころができたので紹介する。

  • 「るり」が生まれ変わるために何度も死んでいたけど、[ 正木 ]も生まれ変わるために死んだのでは?って意見
  • 最後まで話し合いの場に参加しなかった[ 三角 ]も、「るり」との年の差を埋めて生まれ変わるために死んだのでは?という意見

相手を強く思う気持ちがあったら生まれ変わることができるとすれば、正木にも生まれ変わることは可能かもしれない。

小説内の時間軸では[ 三角 ]と「るり」は親子のように見えるし、現実問題結ばれるのは難しいだろう。

このように考えると、[ 三角 ]も[ 正木 ]も生まれ変わるために死んだのかもしれない。

すると、どうなるか。

近い世代に「るり」、[ 三角 ]、[ 正木 ]が存在することになる。

はじめからやり直し。

月のように何度も満ちては欠けるように、このストーリーも何度も繰り返すんだ。

いろんな人の人生を借りて。

そこにあるはずの愛が略奪された

ある一定の年齢になって「るり」の記憶がよみがえるわけだけど、「るり」にならずに過ごしていたかもしれない人生を思うと、やっぱり嫌な気分になる。

「るり」を中心とした、とてつもない我が儘によって、ある一人の人生が変わってしまう。

生まれ変わるたびに、いろんな人の人生を乗っ取っていく。

乗っ取られた人はそこで終わりなのに、「るり」の人格は目的が達成されるまで続いていく。

これのどこが「純愛」なんだよ~~~って思って、純愛という語について調べてみたら、なるほど周りを巻き込むかどうかは純愛には関係ないのかもしれない。

私の純愛像と違うだけで。

『月の満ち欠け』の感想まとめ

生まれ変わりというものが、現実的じゃないけど、現実的っぽいと思わされるのは、まぎれもなく筆者の力なんだろうな。

ただ、この作品をファンタジーっぽい感じで読み取る人と、現実でもありそうやなって現実よりにほんのり思う人とに分かれそう。

現実的じゃないけど不思議なことってあると思う派なので、私は後者。

だからこそ、純愛話として捉えることが難しかったのかもしれない。

小説ひとつで「ああでもない、こうでもない」と考えるのは中々ないので、そういう意味で読んで良かったし、感想を語り合いたい本。

ところで、生まれ変わりって信じる?

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